「どのファクタリング会社を選べばいいのか分からない」「提示された手数料は本当に適正なのか…」
資金繰りに頭を悩ませ、藁にもすがる思いでファクタリングを検討しているあなたは、今まさにそんな不安を抱えているのではないでしょうか。甘い言葉で誘い、高額な手数料をかすめ取ろうとする業者がいるのも、この業界の紛れもない事実です。
元ファクタリング会社の営業部長、黒木 仁です。私は約10年間、数千社の資金調達の現場に立ち会う中で、この業界の「きれいごと」だけではない「裏側」を嫌というほど見てきました。経営者の弱みに付け込み、不利な契約を結ばせる手口を目の当たりにし、良心の呵責から業界を去ることを決意しました。
この記事では、私が業界で見てきた「失敗のパターン」を共有し、あなたが同じ轍を踏まないための「武器」としての知識を提供します。これは綺麗事ではありません。あなた自身と会社を守るための、元・中の人だからこそ語れる不都合な真実です。最後まで読めば、あなたはファクタリング会社を正しく見極め、賢い選択ができるようになっているはずです。
目次
相見積もりが必須な理由 – 業界の不都合な真実
はっきり言って、ファクタリング会社を1社だけで決めるのは、カモがネギを背負って歩いているようなものです。なぜなら、彼らは「足元を見る」プロだからです。まずは、その不都合な真実からお話ししましょう。
ファクタリング会社は「足元を見る」プロ
私が営業部長だった頃、資金調達に焦っている経営者ほど、良い「お客様」でした。なぜなら、多少高い手数料を提示しても、他に選択肢がないと思い込んでいるため、簡単に契約してくれるからです。「すぐに資金が必要です」という言葉は、彼らにとって「言い値で契約します」というサインに他なりません。
ファクタリングの手数料には、銀行の金利のように法律で上限が定められているわけではありません。つまり、ファクタリング会社が「手数料20%です」と言えば、それがまかり通ってしまう世界なのです。1社だけの見積もりでは、その提示額が適正なのか、あるいは法外なものなのか、判断する基準すら持てません。これほど危険なことはないでしょう。
手数料相場を知らないと、後悔する
では、適正な手数料は一体いくらなのでしょうか。業界の一般的な相場は以下の通りです。
| ファクタリングの種類 | 手数料相場 |
|---|---|
| 2社間ファクタリング | 8% ~ 18% |
| 3社間ファクタリング | 2% ~ 10% |
しかし、これはあくまで「優良企業」の相場です。悪質な業者になれば、平気で20%、30%という手数料を提示してきます。例えば、1,000万円の売掛債権をファクタリングする場合、手数料が10%なら手元に残るのは900万円ですが、20%なら800万円。たった1社の見積もりを鵜呑みにしただけで、100万円もの大金を失う可能性があるのです。この事実を知ってもなお、あなたは1社だけで決められますか?
悪質業者を見極める唯一の方法
「そんな悪質な業者に引っかからなければいいだけだろう」と思うかもしれません。しかし、彼らは巧妙に優良企業を装っています。ウェブサイトは綺麗で、担当者の物腰も柔らかい。素人が見抜くのは至難の業です。
そこで唯一、悪質業者を見極める方法が「相見積もり」なのです。複数の会社から見積もりを取れば、1社だけ異常に高い手数料を提示している会社が浮かび上がってきます。「審査なしで即日入金!」などと甘い言葉をささやく業者も、相見積もりを取ることで、その異常性に気づくことができるでしょう。手数料だけでなく、契約書に記載された不明瞭な「事務手数料」や「手付金」といった項目も、比較することで初めて「おかしい」と気づけるのです。
相見積もりの正しいやり方 – 営業マンの手口を逆手に取る
相見積もりの重要性はご理解いただけたでしょう。しかし、ただやみくもに複数社へ連絡すればいいというものではありません。ここからは、元営業部長だからこそ知っている、営業マンの手口を逆手に取った「正しい相見積もりのやり方」を伝授します。
事前準備:ウェブサイトで「交渉できそうな企業」を絞り込む
まず、問い合わせをする前に、各社のウェブサイトをチェックし、「交渉の土台にすら乗らない」企業をふるい落とします。見るべきポイントは以下の3つです。
- 手数料の目安: 自社の希望とあまりにもかけ離れている企業は時間の無駄です。
- 取引形態: あなたが2社間ファクタリングを希望しているのに、3社間しか扱っていない会社に連絡しても意味がありません。
- 取扱債権額: あなたの売掛債権が50万円なのに、最低取扱額が100万円の会社では門前払いです。
この段階で、候補を5〜6社に絞り込んでおきましょう。ここからが本当の勝負です。
相見積もりは3~4社に絞り込む理由
「多ければ多いほど良いのでは?」と思うかもしれませんが、それは間違いです。相見積もりを依頼する企業は、最終的に3〜4社に絞り込むのが賢明です。なぜなら、営業マンは「先の見えない長期化した交渉」を何よりも嫌うからです。
5社も6社も相手にしていると、各社とのやり取りが煩雑になり、交渉が泥沼化します。結果的に、あなたは疲れ果て、中途半端な条件で妥協してしまうことになるでしょう。それでは本末転倒です。的を絞り、効率的に条件を引き出す。これが鉄則です。
本命企業は最後に連絡する
ここが最も重要なポイントです。あなたが「ここが一番良さそうだ」と感じる本命企業には、一番最後に連絡してください。これは営業マンの心理を突いた、非常に効果的なテクニックです。
営業マンは、問い合わせのあった順に顧客をリスト化します。そして、早くに連絡をくれた企業ほど「まだ時間があるだろう」と判断し、対応を後回しにする傾向があります。逆に、最後に連絡してきた企業に対しては、「他社と比較検討した上で、最後にウチに来た。これは契約の可能性が高い」と判断し、短期決戦で好条件を提示しようと力が入るのです。
じっくりと腰を据えて交渉したい本命企業だからこそ、最後に連絡する。これにより、あなたは交渉の主導権を握ることができるのです。
見積書で絶対に確認すべき項目 – 契約書の罠
さて、複数の会社から見積書を取り寄せたら、いよいよ比較検討の段階です。しかし、ここにも業界の巧妙な罠が潜んでいます。手数料の数字だけを見て「A社が一番安い!」と飛びつくのは、あまりにも危険です。契約書にサインする前に、以下の項目を虫眼鏡で見るようにチェックしてください。
手数料だけを見てはいけない
営業マンは決まってこう言います。「弊社の手数料は5%です」。しかし、その言葉を鵜呑みにしてはいけません。実際に振り込まれる金額が、手数料を差し引いた額よりもはるかに少ないケースは日常茶飯事です。なぜなら、見積書には手数料以外の費用が巧妙に隠されているからです。
| 確認すべき手数料以外の費用 |
|---|
| 印紙税 |
| 債権譲渡登記費用 |
| 出張費・交通費 |
| その他諸経費 |
特に注意すべきは「債権譲渡登記費用」です。これは数万円から十数万円かかることもあり、手数料を安く見せかけるための手口としてよく使われます。見積書に「その他費用」といった曖昧な項目がある場合は、その内訳を徹底的に問いただしてください。「手数料5%と聞いていたのに、諸々引かれたら実質15%だった」などという話は、この業界では笑い話にもなりません。
ノンリコース(償還請求権なし)の確認
これは絶対に、絶対に譲ってはいけない一線です。「償還請求権」とは、万が一、売掛先が倒産して売掛金が回収できなくなった場合に、ファクタリング会社があなたにその金額を請求できる権利のことです。これがある契約を「リコース契約」と呼びます。
はっきり言いますが、リコース契約はファクタリングではありません。それは単なる「売掛債権を担保にした融資」です。そして、貸金業登録をしていない業者がこれを行うことは、紛れもない違法行為です。優良なファクタリング会社は、すべて「ノンリコース(償還請求権なし)」契約です。契約書の隅に、小さな文字で「償還請求権あり」と書かれていないか、必ず確認してください。
掛け目(売掛金の買取率)の確認
「掛け目」も、実質的な手数料を分かりにくくするための手口です。例えば、100万円の売掛債権に対して「掛け目80%」と設定された場合、ファクタリング会社はまず80万円を基準に手数料を計算します。残りの20万円は、売掛先から入金があった後に返還される、という仕組みです。
一見、問題ないように思えるかもしれません。しかし、掛け目が低いということは、それだけファクタリング会社があなたの売掛債権を低く評価している証拠です。また、この「返還されるはずの20万円」から、さらに不明瞭な手数料が引かれるケースもあります。掛け目が不当に低くないか、複数の会社を比較して見極める必要があります。
入金スピードの確認
「最短即日入金!」という謳い文句も、安易に信用してはいけません。「即日」の定義は会社によってバラバラです。「午前中に契約すれば即日」という会社もあれば、「契約日の翌営業日」を「即日」と表現する悪質な会社すらあります。あなたの資金繰りの計画に影響が出ないよう、「いつ、何時に、いくら振り込まれるのか」を、契約前に担当者に明確に言質を取っておくべきです。
相見積もり交渉のテクニック – 営業マンとの心理戦
見積もりが出揃ったら、いよいよ交渉のステージです。ここからは、営業マンとの心理戦。彼らの思考を読み、有利に交渉を進めるための具体的なテクニックをお伝えします。これを実践するだけで、あなたはただの「お客様」から、手ごわい「交渉相手」へと変わることができるでしょう。
「相見積もりを取っている」と伝える効果
まず、交渉のテーブルに着いたら、臆することなく「現在、複数の会社様からお見積もりをいただいております」と伝えましょう。これを言うと相手の気分を害するのではないかと心配する方がいますが、それは完全な杞憂です。むしろ、逆です。
まともなファクタリング会社であれば、顧客が他社と比較するのは当然と考えています。そして、「相見積もり」という言葉を聞いた瞬間、営業マンの頭の中には「競争」のスイッチが入ります。「他社に負けたくない」「この契約を取りたい」という心理が働き、より良い条件を引き出しやすくなるのです。隠すことは、百害あって一利なし。堂々と宣言しましょう。
他社の見積もりを「武器」にする方法
相見積もりで手に入れた他社の見積書は、あなたの最強の「武器」になります。例えば、本命のB社との交渉で、A社の見積書を見せながらこう切り出すのです。
「A社さんからは、手数料5%というご提案をいただいています。御社にも、ぜひ前向きなご検討をいただけないでしょうか」
このように、具体的な数字を提示することで、交渉は一気に現実味を帯びます。ただし、この武器には一つだけ注意点があります。それは「情報漏洩」です。他社の見積書を提示する際は、以下の点を必ず守ってください。
- 担当者名や連絡先は黒塗りにする
- 見積書のPDFデータをそのまま転送しない
これを怠ると、あなたは「情報管理ができない会社」というレッテルを貼られ、信用を失います。そうなれば、どんな交渉も有利に進めることはできません。武器の取り扱いには、細心の注意を払ってください。
「即決」カードを使いこなす
交渉が最終盤に差し掛かり、あと一歩で条件がまとまりそうな場面。ここで有効なのが「即決」というカードです。
「もし、手数料を7%にしていただけるのであれば、本日中に契約を即決します」
営業マンにとって、契約が取れるかどうか分からないまま交渉を続けるのは大きなストレスです。そのため、「即決」という言葉は非常に魅力的です。「この条件を飲めば契約が確定する」という安心感から、最後の一押しで条件を譲歩してくる可能性は十分にあります。
ただし、このカードは諸刃の剣でもあります。相手から「即決していただけるなら、この条件でいかがですか?」と逆提案されることもあるからです。その時に備え、「これ以上は譲れない」という自社なりの最低条件(デッドライン)を、交渉前に必ず決めておくようにしてください。
絶対に避けるべき罠 – 業界の裏側
ここまでの知識で、あなたはすでにファクタリング会社の営業マンと対等以上に渡り合えるはずです。しかし、最後にお伝えしなければならない、絶対に足を踏み入れてはならない「罠」が存在します。これらは、知らずに手を染めると、あなたの会社を再起不能な状況に陥れる可能性すらある、業界の最も暗い部分です。
二重譲渡は違法行為
これは、私が最も警鐘を鳴らしたいことです。「二重譲渡」とは、同じ一つの売掛債権を、複数のファクタリング会社に売却(譲渡)してしまう行為です。これは、明白な詐欺罪に該当する犯罪行為です。
「そんなことをするはずがない」と思うでしょう。しかし、資金繰りに窮した経営者が、相見積もりを取っているうちに混乱し、「A社からは見積もりだけ」「B社と契約しよう」と考えていたつもりが、誤って両社と契約してしまう、というケースが後を絶ちません。悪意がなくとも、結果は同じです。発覚すれば、ファクタリング会社から告訴され、事業の継続は不可能になるでしょう。見積もりと契約は、全くの別物であると肝に銘じてください。
見積もりと契約を混同しない
念のため、もう一度言います。同じ売掛債権を使って、複数の会社から「見積もり」を取ることは、全く問題ありません。むしろ、推奨される行為です。しかし、その売掛債権について「契約」を交わしていいのは、世界でただ1社だけです。この一線を越えてはいけません。
審査なしを謳う業者は100%悪質
「審査なし」「誰でも通る」といった甘い言葉で誘ってくる業者は、100%、悪質な闇金業者だと断言します。正規のファクタリング会社は、売掛債権が本当に回収できるのかを判断するために、必ず審査を行います。審査をしないということは、そのリスクを別の何かで補っているということです。それは、法外な手数料であったり、後から「やっぱり返せ」と迫るための違法な契約であったりします。審査がないのは、親切なのではなく、あなたを罠にはめるための入り口なのです。
保証人や担保を要求する業者
ファクタリングは、あくまで「売掛債権の売買契約」です。あなたの会社が借金をするわけではありません。したがって、保証人や不動産などの担保を要求されることは、絶対にありません。
もし、ファクタリング会社から保証人や担保を求められたら、それはファクタリングを装った「融資」、つまり貸金業です。貸金業登録をせずに融資を行うことは、貸金業法違反という犯罪です。そのような業者とは、一刻も早く縁を切るべきです。彼らの目的は、あなたの会社の売掛債権ではなく、あなた自身を借金漬けにすることに他なりません。
まとめ
今回は、元ファクタリング会社の営業部長という立場から、相見積もりの正しいやり方と、業界の裏に潜む注意点について、包み隠さずお話ししました。
重要なポイントをもう一度振り返りましょう。
- 1社だけの見積もりは絶対に避ける
- 手数料だけでなく、諸費用や契約内容を徹底的に比較する
- ノンリコース(償還請求権なし)は絶対条件
- 相見積もりは3〜4社に絞り、本命は最後に連絡する
- 二重譲渡や審査なしの業者など、違法な罠には絶対に近づかない
ファクタリングは、正しく使えば、あなたの会社を救う強力な資金調達手段となり得ます。しかし、一歩間違えれば、その足元をすくわれ、再起不能の深みにはまる危険性もはらんでいます。
この記事を読んだあなたは、もはや情報弱者ではありません。営業マンの甘い言葉に惑わされず、契約書の隅々まで自分の目で確かめ、そして、交渉の主導権を握るための知識を手にしました。安易に業者を頼るのではなく、まずはあなたの手元にある契約書や見積書を、今日お伝えした視点で見直してみてください。それが、あなた自身と会社を守るための、最も確実な第一歩となるはずです。